伊藤秀史、(2009)、「ノーベル経済学賞の2氏 市場の枠超え、ガバナンスの仕組み解く」

先日の「パパは何でも知っている」というエッセイで、「矢野は自分のことを専門バカだと思っている」というお話をさせていただきました。専門バカなので、「自分の勉強したことのない分野のことはできる限り話さない」ようにしているのですが、今日はその原則から少しばかり逸脱することにしたいと思います。

それは、現在発売中の雑誌「エコノミスト」に掲載されている伊藤秀史教授(一橋大学)の「ノーベル経済学賞の2氏 市場の枠超え、ガバナンスの仕組み解く」(週刊エコノミスト2009年11月24日号)という記事に感動したからです。

さて、矢野は今まで当blogではノーベル経済学賞についてほとんど話題にしたことがありません。というのはそもそも自分の専門が狭すぎるので、誰がノーベル経済学賞を受賞してもほとんどの場合知りませんし、毎年恒例の発表直前の「今年は誰が受賞するか」という話題にも・・・まあ、あまり興味を持ったことはありません。

今年のノーベル経済学賞受賞者がエリナー・オストロム教授(インディアナ大学)、オリバー・ウィリアムソン教授(カリフォルニア大学バークレー校)という報道にも「ああ、また今年も知らない人だな」以上の感想はありませんでした。昨日、職場の同僚から「この記事はとても素晴らしいから読んでみろ」と言って伊藤先生の記事を渡されるまでは・・・

一度読んで、すぐにこれがとてつもなく素晴らしい記事であることが分かりました。二度読んでさらに感動が深まりました。

この伊藤先生の記事では受賞理由である「経済ガバナンスとは何か」という初歩的な知識から始めて、それが社会的にどのような意味があるのか、そして、オストロム先生の業績の意味、ウィリアムソン先生の業績の意味が非常に分かりやすくしかも極めて論理的に論じられており、さらには両先生の業績の経済学における意義が余すところなく説明されています。最後には「世間でよくある誤解」をしないようにという丁寧なまとめまでついています。

伊藤先生の豊な学識に裏打ちされたとてつもない量の情報がたった2ページしかない記事の中に信じられないくらい凝縮されています。

そこで、矢野自身も他の同僚に、「この記事は素晴らしいから読んでみてください」と言ったところ、その同僚がこんなことを発見しました。「矢野さん、この伊藤先生の記事は、パラグラフのトピックセンテンスだけ読んでも内容が分かります。」

・・・そして、3回目読んだ訳ですが・・・

確かにその通り!

それぞれのパラグラフ(段落)の最初の文章(これをトピックセンテンスといいます)だけを拾い読みしてもちゃんとオストロム先生の業績の意味、ウィリアムソン先生の業績が理解できるように書かれています。

矢野は正直に言ってこんなに素晴らしい雑誌記事を読んだことは今までにあまり経験がありません*1

どうか一人でも多くの方にこの伊藤先生の素晴らしい記事を読んでいただき、矢野と感動を共有していただければ幸いです。

*1:さすがに皆無ではありませんが、非常に珍しいことです。