若田部「危機の経済政策」合評会コメント〜もしくはベイズ計量経済学から見たState of Macro〜

先週土曜日に経済理論史研究会で若田部昌澄先生の「危機の経済政策」の合評会があり、討論者をさせていただきました。資料を作ったところ、肝心の「危機の経済政策」についての話は非常に短く、「政策分析に用いる動学的確率的一般均衡に関して矢野が最近考えていること」に関する話が大半を占めるという変な資料になってしまいました_| ̄|○(こんな資料でも「それで良いです」と言ってくださった若田部先生に心より感謝いたします)。

危機の経済政策―なぜ起きたのか、何を学ぶのか

危機の経済政策―なぜ起きたのか、何を学ぶのか

若田部先生のこの本は(1)1930年代アメリカの大恐慌(本書の用語では「大不況」)、(2)1970年代の大インフレ、(3)1990年代日本の大停滞(俗にいう「失われた10年」)、(4)現在の経済危機について、大変に包括的に

  1. 政府・中央銀行の政策並びに政策当局者の発言を追いながら
  2. マクロ経済学の変遷

を描いています。

矢野は申し訳ないことに歴史に疎く、知的教養にも非常に欠けているため上記のような内容についてあまり知らないのですが、そんな矢野にもよく分かるように「危機の経済政策」と「マクロ経済学」が相互作用を起こしながら発展してきた歴史が丹念に解説されています。

特に現代マクロ経済学はしばしば数学的な形で表されることが多く、非常に取っ付きにくい感じがすることが少なくないのですが、それが実は「現実経済の問題を解決するための実用学」として発展してきたことがよく分かり、広くこの分野について興味をお持ちの方にお勧めいたします。

合評会での矢野の資料も・・・正直に言って会の趣旨にまったく合致しないものでお恥ずかしい限りなのですが・・・掲載させていただきます。

矢野個人から見た「動学的確率的一般均衡(Dynamic Stochastic General Equilibrium Models, DSGE)とはどのようなものか?」「DSGEによる政策分析の現状はどのようになっているのか?」に関する一般向けの紹介になっていますので、ご笑覧いただければ幸いです*1

若田部「危機の経済政策」合評会コメント〜もしくはベイズ計量経済学から見たState of Macro〜(パワーポイント版)
http://dl.dropbox.com/u/2260564/watakabe/wakatabe_comments_state_of_macro_slide.ppt

若田部「危機の経済政策」合評会コメント〜もしくはベイズ計量経済学から見たState of Macro〜(PDF版)
http://dl.dropbox.com/u/2260564/watakabe/wakatabe_comments_state_of_macro_slide.pdf

*1:「矢野、お前がごとき若輩者が、DSGEを語るとは百年早い」というご意見もあろうかとは思いますが・・・