yyasudaさんがThe New Palgrave Economics Collectionの中から「ゲーム理論」と「行動経済学と実験経済学」と「貨幣経済学」を紹介しておられたので、矢野も自分の専門である「マクロ計量経済学と時系列解析(Macroeconometrics and Time Series Analysis)」についてご紹介します。
[要約]
The New Palgrave Economics Collectionの中のMacroeconometrics and Time Series Analysisはこの分野の研究者ならびに興味を持つ方必携の書です。広く多くの方にお勧めします(注:一般向けではありません)。
[Macroeconometrics and Time Series Analysis]
2008年9月のリーマンショック以降、急激な景気悪化に伴い、マクロ経済を巡って様々な政策やその効果について議論が行われてきました。矢野自身もモンテカルロフィルター(別名:粒子フィルター)を用いたDSGEモデルの実証分析でこの問題に取り組んでいる最中です。
そんな中、The New Palgrave Economics Collectionの一つとしてマクロ経済学の実証分野に置ける重要手法が網羅されたMacroeconometrics and Time Series Analysisが出版されたことは非常に意義深いことだと思います。矢野個人としてはここ数年買った専門書の中で最も価値のある本の一つだと思っています。
内容はThe New Palgrave Dictionary of Economicsからこの分野の関連記事を集めたというものですが、とにかく重要な内容が短くまとめられており「読んで楽しく、なおかつ役に立つ」ようなっています。
たとえば、矢野が関連する分野だけでもBayesian methods in macroeconometricsはF. Schorfheideがベイズ統計学を用いたDSGEモデル分析についてまとめていますし、CointegrationはM. Watson、GMMについてはL. Hansen先生ご本人が書いているし、Rational expectationsはT. Sargent、Regime switching modelsはJ. D. Hamilton、State space modelはA. Harvey、Structural changesはP. Perron、Unit rootsはP. Phillipsという感じです。他にもC. Sims, T. Cogley, D. Hendry, C. Grangerと名だたる大御所が著者として名を連ねています。
また、特筆すべきは矢野の専門分野であるモンテカルロフィルタ(別名:粒子フィルター)にも項目が*1割り当てられており、その著者はJesus Fernandez-Villaverdeとこちらも誰も文句のない布陣になっています。
特にマクロ経済学やその実証分析に興味のある方はぜひとも一冊お手元に置いておく価値があると思います。強くお勧めします!これだけの内容の本がたった3000円程度で手に入るなんて安い!!!
Macroeconometrics and Time Series Analysis (The New Palgrave Economics Collection)
- 作者: Steven Durlauf,L. Blume
- 出版社/メーカー: Palgrave Macmillan
- 発売日: 2009/11/06
- メディア: ペーパーバック
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*1:カルマンフィルターと一緒に"Kalman and particle filtering"として、ではありますが。それでもめでたい!