ハリ・セルダンになりたくて 第2部 (2)

"The Empire Strikes Back"〜2006年の金融政策〜

「(2006年現在)日本は景気がいい」「(さらに)今後も好景気は続く」という認識は、前述の吉崎氏だけではない。そのことは日銀の福井総裁の会見などからもうかがうことができる。たとえば、6月15日の総裁定例記者会見で福井総裁は以下のように述べている。

(総裁) (前略)背景となる経済・物価情勢については、前回会合以降、いくつかの指標が明らかになりましたが、日本経済は、内外需、企業部門と家計部門のバランスがとれたかたちで、着実に回復を続けていることが改めて確認されました。(中略)個人消費は、ご承知の通り天候要因が少しあり、一部に弱めの指標も見られることは確かですが、全体として増加基調にあると言えると思います。(中略)先行きにつきましても、生産・所得・支出の好循環が働くもとで、4月の展望レポートで示した見通しに沿って、景気は息の長い成長を続けていく可能性が高いとみております。(中略)物価面では、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に上昇を続けており、先行きについても、上昇を続けるだろうとみられます。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1〜3月に続き4月も+0.5%となりました。中身を見ると、サービス部門で年度替わりに伴う価格改定が押し上げに寄与したほか、上昇品目が徐々に広がりを見せているというのが特徴です。こうしたことからみて、消費者物価はプラス基調で現状推移して、先行きもマクロ的な需給ギャップが緩やかに需要超過方向に向かっていくとみられる中で、プラス基調を続けていくと予想される状況にあります。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0606c.pdf

さらに7月14日の総裁定例記者会見での回答からもそのことは伺える。

(問) 消費者物価指数が7か月連続でプラスになっていることが今回の解除の1つの大きな要素になったと思いますが、そこには原油の高騰もかなり反映されています。その消費者物価指数そのものが、来月に基準が見直されると今の水準より少し下がるだろうという見方ですが、今後デフレに戻る危険性、可能性はもう消えたと言い切って良いのかどうか、お考えを聞かせて下さい。(中略)
(答) 消費者物価指数は安定的にプラス基調でこのところ推移してきています。この先も、おそらくプラス基調を維持するだろうというのが私どもの基本認識です。その判断の最も大きな根拠は、経済情勢判断について景気は回復の段階を過ぎて拡大の過程に入ったことです。判断は、上方修正したわけではなく、局面の変化、つまりマイナスの需給ギャップをほぼ解消して需要超過の経済に入ってきているという判断ですので、経済がマクロ的に見て需要超過の経済に入ってくれば、それだけ物価の上昇圧力は少しずつ増してくる、ということです。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0607b.pdf

以上のような認識の下、以下の二つの重要な決定が日銀によって下された。

量的緩和解除:2006年3月9日
ゼロ金利解除:2006年7月14日

[関連エントリー]
量的緩和解除に反対します
http://d.hatena.ne.jp/koiti_yano/20060227/p1
ゼロ金利解除に反対します
http://d.hatena.ne.jp/koiti_yano/20060703/p2

[補足]少し気になる報道があったので補足として取り上げておきたい。

 日本銀行が、1月にも追加利上げを実施する方向で検討する見通しとなったことが、31日、分かった。
(中略)
 06年11月の物価、消費、雇用、生産などの指標が改善したことで、金融政策を決定する9人の政策委員(正副総裁3人と審議委員6人)の中で、日本経済が日銀の描く景気拡大シナリオにおおむね沿った動きを示しているとの判断が大勢を占めている模様だ。
月内にも追加利上げ実施、日銀が検討(読売新聞[2006年1月1日])

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20070101i302.htm

"The Empire Strikes Back!"