そのゼロ金利解除、もうちょっと待てませんか?

いやー実は「ゼロ金利解除に反対する」って内容の長い文章を書いたんですが、どうもしっくり来ないので書いたものを捨ててしまいました。ここは癒し系小ネタblogだということをすっかり忘れていました。以下、雑談風に書きますので、「まあこんな見方もあるのかなぁ」くらいに気軽に読んでください。

まず、どちらもnikkei.co.jpの記事なんですが、読んでみてください。
(1) 6月の日銀短観、景気回復基調鮮明に──大企業、製造業が2期ぶり改善
(2) 6月の景気動向DI、3カ月連続悪化で今年最低水準

上の記事は日銀の短観に関するもので、下の記事は帝国データバンクの調査に関するものです。タイトルを見るとまったく反対の印象−−−一方は「景気が回復しています」という記事で、もう一方は「景気は悪化しています」−−−を持つと思います。

え?それぞれの記事が書かれた時期が違うんじゃないかって?いやいや、どちらも先週の記事なんですよ(上の記事が7月3日、下の記事が7月7日)。

日銀が3日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を表す業況判断指数(DI)は大企業製造業でプラス21となり、前回の3月調査に比べて1ポイント改善した。(中略)堅調な需要を受けて企業の景況感が改善し、積極的な設備投資につながっており、景気の回復基調が鮮明になっている。

6月の日銀短観、景気回復基調鮮明に
http://www.nikkei.co.jp/keiki/tankan/

民間信用調査会社の帝国データバンクが7日発表した民間企業の景況感を示す景気動向調査によると、6月の景気動向指数(DI、50が「良い」と「悪い」の判断の分かれ目)は46.0と前月に比べ1.0ポイント悪化した。悪化は3カ月連続で、1、2月の46.9を下回り今年最低の水準となった。悪化幅は前月より0.4ポイント拡大し、2002年10月調査(2.1ポイント悪化)に次ぐ大きさだった。

6月の景気動向DI、3カ月連続悪化で今年最低水準
http://www.nikkei.co.jp/keiki/news/20060707d3l0704507.html

さて、なぜこんなに結果が違ってしまったのかっていうと答えは

景気回復基調が改めて示された日銀企業短期経済観測調査(短観、6月調査)と対照的な結果になったことに関しては「当社の調査対象は中小企業が中心で、上場企業は全体の3.9%」とし、大企業の堅調な業績が中小企業にまで波及していないと分析している。

6月の景気動向DI、3カ月連続悪化で今年最低水準
http://www.nikkei.co.jp/keiki/news/20060707d3l0704507.html

日銀短観に関する記事が大企業に着目したものであるのに対して、帝国データバンクの調査に関する記事は中小企業に着目している点でまったく違っているわけです。

で、景気動向に敏感なのは大企業なのか中小企業なのかというと、普通は中小企業なわけです。たとば、内閣府景気動向指数には先行指数に「中小企業売上げ見通しD.I.」が、一致指数には「中小企業売上高(製造業)」が入っています。と言っても別に帝国データバンクの調査が正しくって日銀が間違っているって思っているわけじゃないです。どちらも限られたサンプル数と(おそらく)ある程度はサンプリングが偏っている可能性があるので、どちらも正しくないかもしれません。

とはいえ、日銀短観に関する記事のように大企業の状況だけを見て「景気は力強く回復している」と判断するのもちょっと早計なのではないか・・・と個人的には思います。だから・・・

そのゼロ金利解除、もうちょっと待てませんか?

[参考]
中小企業の定義(中小企業庁
http://www.chusho.meti.go.jp/faq/faq01.html
景気動向指数に採用されているデータ一覧
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/kobetu_gaiyou.pdf
帝国データバンク
http://www.tdb.co.jp/
TDB景気動向調査
http://www.tdb.co.jp/whatsnew/pdf/200606_jp.pdf