"Valuing American Options by Simulation"

最近、ちょっとファイナンスなどでよく用いられるアメリカン・オプションの価格をモンテカルロ法を用いて計算する必要性に迫られていて、関連する論文を読んでいます。それに関してさる先生からLongstaff and Schwartz (2001)がとても興味深いアルゴリズムを提唱していると教えていただきました。

このアルゴリズムモンテカルロ法で株価の経路を計算しておき、dynamic programmingの考え方にしたがって、アメリカン・オプションの最終期から初期に向かって遡ることにより、アメリカン・オプションの価格(プレミアムの価格)を算定します。具体的には各期の継続価値(オプションを行使しない場合の価値)と本質的価値(オプションを行使する場合の価値)を比較して継続価値が高ければオプションを行使しない、本質的価値が高ければオプションを行使する。この手順を最終期から初期に向かって繰り返し、初期に到達したら得られる価値の割引現在価値を合計します(これがオプションの価値になります)。

一般的に言って「継続価値を計算する」のが難しい(積分形になるため)ことが知られているのですが、この論文では「最小二乗法を使って継続価値を計算する」という方法が提唱されています。

え?何を言っているか分からない?いや、実は矢野も論文を読むまで分かりませんでした(恥。とりあえず「一般的に難しいと思われていたことが、えらく単純な方法で解決された点がすごい」と思ってください。

もちろんLongstaff and Schwartz (2001)は思い切った単純化をしている訳で、問題がない訳ではありません(特に基底関数の適切な選択が難しい)。しかし、それでも素晴らしいアルゴリズムだと思います。すでにかなり多くの場所で応用されたり改良されたりしているようです。

[参考文献]
Longstaff and Schawatz, (2001), "Valuing American Options by Simulation," Review of Financial Studies, Vol. 14, 113-147.
岡野、(2005)、「アメリカン・オプション最小二乗モンテカルロ法の精度評価」、UNISYS TECHNOLOGY REVIEW 第84号.
http://www.unisys.co.jp/tec_info/tr84/8410.pdf