裁量政策がもたらす時間的整合的な解について 2

(前回のまとめ)
現代マクロ経済学では政府が最初に宣言した政策を後で変更してしまう問題(時間非整合)を防ぐことが必要だと考えられていて、その方法としてルールを守るというルール型政策があるということを論じた。

(ちょっとした事情)
前回の議論だけを読むと時間非整合の問題を防ぐ方法はルール型政策しかないように感じるかもしれない。実際に前回の議論は時間非整合の問題を論じたkydlandとPrescottの議論を踏まえている。彼らの1977年の論文の題名はその名もずばり"Rules Rather Than Discretion"(裁量よりもルールが良い)である。しかし、現在ではルール以外にも時間非整合を避ける方法があることが分かっている。

(議論 その2)
さて、時間非整合を避けるための本質が何かを考えよう。時間非整合の問題とは「政府が最初に宣言した政策を後で変更してしまう」点にあった。そこで、政府に最初に政策の目標を宣言させた後で、変更しようとすると罰を与えることにするとどうだろうか?すぐに分かるように罰を与えるとするとすると政府は政策変更がしにくくなるに違いない。つまり、時間非整合の問題を避けることができるようになる。

ここで重要なことは「(政策の変更には罰を与えるが)政府の手段については制限を加えない」点である。前回、考察したルール型政策は手段に制限を加える方法(「○○の場合には××とする」とあらかじめ決めておくため)であったが、それとは異なった考え方である。つまり手段に関しては裁量政策を許す方法なのである。このような政策の方法をターゲッティング・レジームと呼ぶ(この呼び方はCarl Walshによる)。

そしてこれが題名にある「裁量政策がもたらす時間的整合的な解」である。つまり、裁量型政策を採用しても政策変更に罰を与えるという枠組みがあれば、時間非整合をさけることができる(時間的整合的な解が存在する)。

次回(最終回)ではインフレーション・ターゲッティングは裁量政策なのかについて論じ、最後に参考文献を挙げる。