日本経済を対象とした推計DSGEモデルにおける財政政策:非リカーディアン家計で全て説明できるか?

職場のdiscussion paperとして以下の論文が公表になりましたので、ご紹介します。

岩田安晴「日本経済を対象とした推計DSGEモデルにおける財政政策:非リカーディアン家計で全て説明できるか?ESRI,ESRI Discussion Paper No.216

矢野が以前書いた「DYNARE による動学的確率的一般均衡シミュレーション」にも書いたことですが、DSGEはその長い歴史の中で金融政策の分析に使われる場合が大半でした。というのはDSGEでは合理的家計(リカーディアン家計)を出発点にするため、長期的にはリカード命題が成り立ち、財政政策はあまり大きな効果を持たないからです。

しかし、近年、各国政府・中央銀行が採用するDSGEモデルでは流動制約下の家計(非リカーディアン家計)を導入することによって財政政策も分析しようと試みがなされることが多いです(近年の動向は岩田論文に記述されています)。

しかし、岩田論文のように実際の税のデータを使って非リカーディアン家計付きDSGEモデルをMCMC推定した論文は世界的に言っても非常に珍しいです。

さらに財政ルールの変更がどのように財政政策の効果に影響するのかを調べた論文は、えーっと矢野の知る限りまだないんじゃないかと思います*1

今後、財政政策を論じる際に出発点となる論文だと思いますので、ぜひ多くの方に読んでいただければと思います。

*1:まあ、この分野は日進月歩なので、少し気を抜くと新しい論文が読み切れないほど出ていたりするので、矢野が知らないだけという可能性はありますが・・・