【年末年始企画】2008年の経済情勢を振り返る(3)〜鉱工業生産指数の低下〜

[お断り]当blogに書かれていることはすべて矢野個人の意見であり、矢野が所属するいかなる組織とも関係ありません。

年末企画「2008年の経済情勢を振り返る」第3回目です(第1回はこちら、第2回はこちら)。

今回は、今年、非常に特徴的な動きを見せた鉱工業生産指数について取り上げます。

[鉱工業生産指数の落ち込み]
12月26日に発表された11月の鉱工業生産指数(季節調節済み)は前月(10月)に対して8.1%も落ち込むという急激な低下を見せました。

正直に言って、鉱工業生産指数がこのように急激に落ち込むのは近年では見たことがありません。12月26日に発表されたのはあくまでも速報値ですから、今後修正される可能性がありますので、その点は注意が必要ですが、修正されたとしても記録的な低下が起こったと言えそうです。

[鉱工業生産指数の先行き]
鉱工業生産指数の落ち込みだけでも非常に厳しいものですが、同時に発表された製造工業生産予測調査の「12月予測」(これは11月時点での「12月の予測」)が前月比8.0%の低下となっており、さらに厳しい先行きを示唆しています。

製造工業生産予測調査というのは主要企業から生産数量の前月実績、当月見込み及び翌月見込みについて調査した結果を指数化したもので、この値がそのまま12月の鉱工業生産指数に反映されるわけではないのですが、「仮に鉱工業生産指数が12月も前月比約8.0%の低下を見せたらどうなるか」をプロットしてみました。

このようなグラフは見たことないので、正直に言って何とコメントしてよいのか分かりません・・・このようなグラフにならないことを心から願うしかありません。

[価格の硬直性と新たなる課題]
大雑把に言って、不況になると

  1. 価格は柔軟に変化すると考える新古典派は企業は価格を低下させて生産量は減らさないと考え
  2. 短期には価格の硬直性があると考えるニューケインジアンは企業は価格を変えずに生産量を減らすと考えます(と矢野は大雑把に理解しています)

今回の鉱工業生産指数の大幅な落ち込みはどちらかと言うとニューケインジアンのモデルと整合的だと思いますが、このような急激な変化をそれだけで説明できるかは大きな課題だと思っています。

実は先週、ニューケインジアン型DSGEモデルの日本経済への実証論文を書き上げ、英文校正に回したところです。その内容はその課題に対してある程度は参考になるのではないかと思っています。

来年のできる限り早い時期にDiscussion Paperとして公表してその意味するところについて多くの皆さんと議論させていただきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

次回は為替レート(円/ドル為替レート)と株価指数について取り上げます。

[追記]
今回取り上げた鉱工業生産指数のグラフが極端なので、「ホントなの?」と思う方がおられるようなので、id:sea_sideさんがブクマコメントで教えてくださった日経新聞のサイトも紹介しておきます。
鉱工業生産:11月の鉱工業生産速報、8.1%低下 前月比下げ幅最大
http://www.nikkei.co.jp/keiki/kougyou/