[お断り] 以下の発言は矢野個人のもので、矢野が所属するいかなる組織とも関係ありません。
[このエントリーの趣旨]
「げっ歯類のレミングは時折集団自殺を行う」という都市伝説がある*1。わが祖国の現状を見るに、僕は今や死に向かって疾走するレミングたちを見ているような気分だ。100年後の歴史家たちが歴史書を書く時に「少なくとも一人は正しいことを言っていた」ことが分かるように記録を残す。
[前提]
現在、マクロ経済学でスダンダードとなっているNew Keynesian, Dynamic Stochastic General Equilibrium Models(Woodford (2003), Walsh (2003), Gali (2007)等を参照せよ)によれば、以下のことが正しいと考えられている。
- 国の民間部門のある一定割合は「将来に対する予測」に基づいて行動する
- 短期においては企業はその製品価格やサービス価格を必ずしも柔軟には改訂できない
- そのため、中央銀行は金融政策によって景気に影響を及ぼすことができる
- 開放経済においてはある1国の柔軟なインフレ目標とすべき経済指標は(景気安定という側面からみると)GDPデフレーターである(Svensson (2000)等)*2
- 流動性制約下の家計などの"Hand-to-Mouth"行動をとる家計に対しては所得再分配がある一定の効果を持つ(Erceg, et al. (2006)[SIGMA], Iida and Yano (2008)等)
[2008年に実行されるべきであった政策]
New Keynesian, Dynamic Stochastic General Equilibrium Modelsから得られる知見を元に本来ならば実行されるべきであった政策は以下の通りである。
- 金融政策:ゼロ金利政策への復帰と柔軟なインフレ目標付きの長期国債買い切りオペ [「将来に対する予測」に基づいて行動する家計向けの政策]
- 所得再分配:流動性制約下にあると考えられる低所得者層(年金受給家計も含む)に対する所得移転 [流動性制約下の家計などの"Hand-to-Mouth"行動をとる家計向けの政策]
100年後の歴史家たちがこの記述に気が付いてくれることを祈り、ここに記録を残す。
矢野浩一(2008年9月18日19:30から20:30に記す)
[参考文献]
時間のある時に作成