<現代経済理解へのガイド>夏休みの課題図書リスト(案)

学生さんたちに出す夏休みの課題図書のリストを作ってみました。以下のリストから一冊を読んで、感想文を提出してもらおうかと思っています。

以下の図書の選定理由はあまり厳密なものではないのですが

  1. 新書であること(「比較的、値段が安い」というのが理由)*1
  2. 最近、出版されたものであること(例外あり)
  3. あまり難しくないこと
  4. 読んで面白い(少なくとも矢野は楽しんで読んだものである)こと
  5. 標準的な経済学もしくは最新の研究成果に基づいていること*2
  6. 数学・数式が出てこないこと

という大雑把な基準で選びました。

[経済学を様々な分野へ応用する]
「こんなに使える経済学―肥満から出世まで」大竹文雄編著、(ちくま新書 701)

こんなに使える経済学―肥満から出世まで (ちくま新書)

こんなに使える経済学―肥満から出世まで (ちくま新書)

推薦理由:大竹先生を含め、当代随一の研究者たちが経済学の最前線を分かりやすく面白く解説したものであり、読み応えがある。何よりも読んで楽しく、いろいろ考えさせられる!この本はとにかく素晴らしい(一点だけ不満な部分がありましたが)!

「これも経済学だ!」、中島隆信著、(ちくま新書610)

これも経済学だ! (ちくま新書)

これも経済学だ! (ちくま新書)

推薦理由:中島先生は「お寺の経済学」などの「経済学を様々な分野に応用した啓蒙書」をいろいろ書かれていますが、その中でもこれが「入門の入門」として最適であるため。「おお、こんなことも経済学で分析できるんだ!」という新鮮な驚きがあります(なお、同種の本であるレヴィットの「ヤバい経済学」は「新書じゃない」という理由で機械的に落選しました)。

「経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには」大竹文雄著、(中公新書1824)

推薦理由:大竹先生の本をもう一冊。こちらも世の中の様々な問題を経済学の最新研究に基づき解明するという視点で書かれている名著であるため。

[経済学全般について学ぶ]
「はじめての経済学〈上〉」伊藤元重著、(日経文庫1014)

はじめての経済学〈上〉 (日経文庫)

はじめての経済学〈上〉 (日経文庫)

推薦理由:新書でミクロ経済学マクロ経済学を含む経済学全般について書かれた本は(実は)あまりない。できれば「〈上〉〈下〉」ともに薦めたいところですが、他の課題図書が一冊なので、公平を期して「〈上〉」のみリストに載せますが、それでも「経済学とは何か」「マクロの基本」「ミクロの基本」「ゲーム理論の基本」が入っているのはすごい。

「経済学を学ぶ」岩田規久男著、(ちくま新書2)

経済学を学ぶ (ちくま新書)

経済学を学ぶ (ちくま新書)

推薦理由:こちらも新書でミクロ経済学マクロ経済学を含む経済学全般について書かれた数少ない本。「経済学とは何か」とか「消費者は合理的か」などの話題から始まり、需要と供給、不完全市場、マクロまで、ゲーム理論以外はこれ一冊で学べる驚異の新書。1994年の本なのでインフレターゲット政策などの現在では標準になった話が出てこないため、岩田先生、改訂版出してください!

[日本経済について学ぶ]
霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」 」高橋洋一著、(文春新書 635)

霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」 (文春新書)

霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」 (文春新書)

推薦理由:暗黒卿の書いた本だから(嘘)。矢野は必ずしも高橋さんの意見に全面的に賛成ではない部分もありますが、「霞が関埋蔵金」や「道路特定財源」「財政政策」「金融政策」など「(現在の/今後の)日本経済を学ぶ」という点ではやはり高橋さんの存在は欠かせないため。とにかく読んで面白い本です(でも、実際に高橋さんと会って話をすると、この本の数倍面白いです)。

「日本経済を学ぶ」岩田規久男著、(ちくま新書512)

日本経済を学ぶ (ちくま新書)

日本経済を学ぶ (ちくま新書)

推薦理由:日本経済に関して第二次大戦後から現在までを歴史に沿って解説した数少ない新書(というかこれだけ?)であるため。「自由競争がなぜ重要であるか」「政府の産業保護がなぜダメなのか」「インフレターゲット政策がなぜ重要であるか」を、日本経済の歴史とともに学ぶことができる。

[ゲーム理論について学ぶ]
「戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する」梶井厚志著、(中公新書1658)

戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する (中公新書)

戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する (中公新書)

推薦理由:ゲーム理論は経済学におけるもっとも重要な分野であり、そこから生まれた新産業組織論などを含めて、現代経済において最も大きな位置を占めているため。特に日本は、ゲーム理論の世界的な研究者が多く、その先生たちの多くが「啓蒙書を書くのもうまい」という恵まれた環境にあるので、「ミク戦」などいろいろある中で何をリストに入れるか迷ったんですが、今回は「新書」ということで。「ゲーム理論を使うとこんなことも分析できるのか!」と驚きとともに学ぶことの多い素晴らしい本です。

[その他]
「それ以外にもこの本はいいよ」という推薦があれば、皆さんにご意見を頂けると助かります。リストに加えるかどうかは少し考えさせてください(すでにリストが長くなってしまっているので)。

*1:それと書店でも比較的手に入り易そうだからという矢野のイメージに基づく

*2:スティグリッツやマンキュー、クルーグマンの教科書にあるような内容に基づいていること。特に日本の経済書に時折見受けられる「俺流経済学」ではないこと。