最適化問題としてのマクロ経済学

「経済学って最適化問題の単なる応用だろ?」という暴言で思い出したので、一つエピソードを。

今から数年前、まだ動学マクロ理論を勉強し始めた頃、ある会合で「アメリカ帰りのPh.D (Economics)」だと言うお方に会いしました。で僕が「最適化問題を解くと」というとなぜかすかさず「制約条件付き最適化問題です」と言い直して下さいます。

同じことが何度も繰り返されたので、僕もいい加減うんざりして、ホワイトボードにベルマン方程式を書いて、「最適化問題です」と言うと、向こうも負けじと「制約条件付き最適化問題です」とおっしゃいました。

しょうがないので「ベルマン方程式は制約条件付き最適化問題を制約条件なし最適化問題に帰着して解いているのですが、それはご理解いただけていますでしょうか?」と申し上げたところ、すごく怖い顔でにらまれました。

アメリカ帰りの秀才」と聞いたんですが、残念ながらベルマン方程式が何をしているのかはご存じなかったようです。

実はベルマン方程式もラグランジュ方程式ハミルトニアンも「制約条件付き最適化問題を(制約条件なし)最適化問題に帰着して解く方法」なので、結局は「(制約条件なし)最適化問題しか解いてない」んですよね。だから「制約条件付き最適化問題」か「(制約条件なし)最適化問題」かってのは大した問題ではないのです*1

僕は高校2年から「日本の理系」として最適化問題ばかり解いてもう20年程度のキャリアがあります。つまりアメリカのPh.D (Economics)コースで最適化問題を習ってたかだが数年のキャリアしかない方の数倍のキャリアがありますが、実際的にはこういう理解であまり問題はないようです*2

補足1. アメリカ帰りのPh.Dの方にお会いして妙なことになったのはこの一例だけで、他の方は知識・人格ともに優れた方ばかりです。その人も単に虫の居所が悪かっただけかもしれません。

補足2.「経済学って最適化問題の単なる応用だろ?」というのは本当にジョークで実際にそう思っているわけではありません*3

*1:結局は最適化問題に帰着される。

*2:いや、もしかしたら問題かもしれませんがw

*3:こういうことを言い出すと「全ての科学は数学の単なる応用だろ?」ってことになってしまうので。