LM曲線なしのマクロ経済学〜「マクロ経済学入門の憂鬱」フォローアップ〜

以前、マクロ経済学入門の憂鬱〜New IS-LMをどのように講義に含めるべきか?という記事を書きました。先日、岩本康志先生が「LM曲線なしのマクロ経済学教科書」について述べておられたので、その後のフォローアップを少し書いてみたいと思います。

「LM曲線なしのマクロ経済学」についてはもちろん、岩本先生が挙げておられるDeLong and Olney, Macroeconomicsが代表的なのですが、それ以外にもいくつかあるので列挙してみます。

[DeLong and Olney]
まずは岩本先生が挙げておられるDeLong and Olney, (2005), Macroeconomicsが一番著名です。

Macroeconomics

Macroeconomics

[Carlin and Soskice]
実はそれ以外にも(出版社の紹介ページにあるように) Carlin and Soskice, (2006), Macroeconomics: Imperfections, Institutions and PoliciesがIS-PC-MPモデル(スタンダードなNew KeynesianモデルであるIS曲線、Phillips曲線、金融政策ルール)で一貫した記述をしています*1

Macroeconomics: Imperfections, Institutions And Policies

Macroeconomics: Imperfections, Institutions And Policies

[スティグリッツ・ウォルシュ]
あと、ちょっと見逃しがちなのがスティグリッツ・ウォルシュ「マクロ経済学」です。これは非常に素晴らしい教科書で、New Keynesianモデルに基づいて大学1年生もしくは2年生向けに「LM曲線なしのマクロ経済学」を記述しています。訳したのも当代一流の先生ばかりなのでお勧めです(原書[Stiglitz and Walsh, Economics]は2002年刊行なので、「LM曲線なしのマクロ経済学」を初心者向けに書いた最初の教科書はこれではないかと思います)。ただし、記述の仕方が少し独特なので、注意が必要です。

スティグリッツマクロ経済学 第3版

スティグリッツマクロ経済学 第3版

[飯田・中里]
それ以外にも日本人研究者が書いたものとして飯田・中里「コンパクトマクロ経済学」があります。「コンパクトな入門書」という企画に基づく本なので紙数が限られている中で「LM曲線抜きのマクロ経済学」にまで言及しているのは特筆に値すると思います。

コンパクトマクロ経済学 (コンパクト経済学ライブラリ)

コンパクトマクロ経済学 (コンパクト経済学ライブラリ)

[Jones]
コメントでdaisukeさんにCharles I. JonesのMacroeconomicsを教えていただきましたので追加します。着々と「LM曲線なしのマクロ経済学」が普及し始めているようですね。

Macroeconomics

Macroeconomics

[注釈]
当エントリーの題名はD. Romer先生の「LS曲線なしのケインジアンマクロ経済学」という有名な論文に由来します。
David Romer, (2000), "Keynesian Macroeconomics without the LM Curve," Journal of Economic Perspectives, American Economic Association, vol. 14(2), pages 149-169, Spring.
http://elsa.berkeley.edu/~dromer/papers/JEP_Spring00.pdf

*1:これは吉野直行先生に教えていただきました。