『仕事ができる人』と『忙しい人』のたった一つの違い

以下の話題に関連して
『忙しい人』と『仕事ができる人』の20の違い
http://d.hatena.ne.jp/favre21/20070927

[二人の部長〜親分部長と暇部長〜]
今から11年ほど前、矢野がまだある会社の新入社員だった頃、二人の異なったタイプの部長を見る機会がありました。

一人は、確かに部下には厳しいが、一度仕事を遂行する段になると他部署を怒鳴りつけてでも部下の仕事を助けてくれる親分肌(以下、「親分部長」)。

もう一人は、小柄で物静か、でも普段は席に座っているだけで暇そうな部長(以下、「暇部長」)。

新入社員としてその会社に入った時に感じたのは「親分部長は何て素晴らしいんだ!」でした。反対に「暇部長は何をやっているのか分からないし、頼りない」と思いました。

しかし、社内のほかの部署での二人の部長の評判を聞くと、どうも「暇部長」の方が評価が高いらしいという「不思議な話」が分かってきました。

そのため、矢野は1年ほど、その二人の部長がどんな風に仕事をしているのかをじっと観察することにしました。

- トラブルを相談に行ったときの反応
親分部長:「何を言っているんだ!」と(トラブルを相談に行った部下を)怒る
暇部長:黙って話を聞く。さらに「トラブルになりそうな事案があればもっと気軽に相談に来てくれ」と言う。

- トラブル解決法
親分部長:最初は不機嫌だが、トラブル解決が必要だと認識すると、他部署と渡り合ったり、他社に圧力をかけてでも問題を解消してくれる
暇部長:他の部署に電話をかけてしばらく小声で話しているか、フラッと出て行ってしばらく帰ってこない

- 結果
親分部長:トラブルは解決する
暇部長:トラブルは解決する

で、親分部長がトラブルを解決してくれる過程は非常に分かりやすいのですが、暇部長がどうやってトラブルを解決していくのかは正直に言ってあまり分からないのです(少なくとも新入社員だった頃の矢野には)。

[暇部長は何をやっているのか]
そこで、矢野はさらに時間を費やして、「暇部長は何をやっているのか」を観察することにしました。

ある人曰く「暇部長なら、この間、『○○ってトラブルになりそうだ』と言って、うちの部長のところに来てたよ。ほら、暇部長と、うちの部長は仲良いから」。他の人曰く「暇部長が言ってきたトラブルだけど、まだうちの仕様変更で簡単に解決するよ」。また他の人曰く「暇部長のところには恩義あるから、うちで何とかするみたいだ」。

一見、何もしていないように見える暇部長ですが、実際には新入社員の見えないところで、事前にトラブルを解決している・・・どうもそうらしいということが見えてきました。

さらに、親分部長のように他の部署の部長と感情的な行き違いがあったりはしないので、他の部署との調整もスムーズに進むことが多いようでした。

[閑話休題]
さて、その暇部長がある時、こんな話をしてくれたことがあります。

「数年前に、社内で新しいサービスを始めようという提案をした事業部があった。しかし、社内では猛反対が起きた。その時に、その部署から私のところに新サービスに協力してくれないかと申し出があった。」

「正直に言って、迷った。日本でも例のないサービスだったし、社内に敵を作ってしまう」

「しかし、将来を見据えるならば、社内の反対を押し切ってでも、その事業部と苦楽を共にして新しいサービスを立ち上げた方がよい。彼らと共に戦う戦友にならなければ、新しい領域を切り開くことはできないと思った」

「だから、今の仕事があるんだよ」

[『仕事ができる人』と『忙しい人』のたった一つの違い]
結局、2年近い観察の結果、矢野は以下のような結論を出しました。『仕事ができる人』と『忙しい人』にはたった一つの違いしかありません。

『仕事ができる人』は、常に将来(時には数年先)のことを考慮に入れながら、トラブルが起きないように先手先手を打って(もしくはトラブルが深刻になる前に解決しながら)仕事を進めている(時には一見、暇そうに見えることもある)。
『忙しい人』は、将来展望がなく、(本来は未然に防げたはずの)トラブル解決に毎日忙殺されている。

・・・・さて、その暇部長が「社内を敵に回しても、将来を見据えるとやった方がいい」と判断したサービスですが・・・10年が経過した現在ではOCNという日本でも有数のプロバイダー(インターネットサービス事業)になっています

矢野は、入社した1996年当時は「電話会社」であったその会社が、インターネットサービスを中心としたネットワーク事業会社に徐々に変わり始める時期を暇部長の部下として過ごしたのでした。