時変係数構造ベクトル自己回帰モデルの先行研究

先日、さる小さな研究会で矢野が研究している時変係数構造ベクトル自己回帰モデル(Time-Varying Structurel Vector Autoregressions)について話をさせていただいたところ、研究会の後に、「もしこの分野について勉強したい場合、何から始めればよいのか」というご質問をいただきました。

正直に言ってまだまだ始まったばかりの分野ですから、勉強するにも初心者向けの入門書などはありませんので、以下のような論文もしくは専門書を読んでいただくしかないと思います。

[先行研究]
始まったばかりの分野ではありますが、この分野の先行研究や関連する論文はすでにかなりの数のものが出ています。その中で比較的最近の論文を二つだけご紹介します(より包括的な論文リストに関してはこれらの論文の文献リストをご参照ください)。
Primiceri, G. (2005), "Time varying structural vector autoregressions and monetary policy," Review of Economic Studies 72(3), 821-852.
http://www.faculty.econ.northwestern.edu/faculty/primiceri/tvsvar_final_july_04.pdf
Canova, F. and Gambetti, L. (2006), "Structural changes in the U.S. economy: Bad luck or bad policy?," CEPR Discussion Paper . No. 5457.
http://www.crei.cat/people/canova/pdf%20files/tvcmoneyfinal.pdf

[教科書]
問題は上の二つの論文を読むにはかなり予備知識がないといけないという点です。少なくとも(1) 従来型の構造VAR、(2) マルコフ連鎖モンテカルロ法、(3) カルマンフィルターの知識はないとこれらの論文を読むことが出来ません。その目的にぴったりの教科書はほとんどないに等しいのですが、あえて挙げるならば:
Canova, F. (2007), Methods for Applied Macroeconomic Research, Princeton University Press.

Methods for Applied Macroeconomic Research

Methods for Applied Macroeconomic Research

[矢野の方法と先行研究の違い]
先行研究のほどんどはマルコフ連鎖モンテカルロ法とカルマンフィルターを組み合わせて用いているのですが、矢野の方法はモンテカルロフィルター(粒子フィルター)だけを用いて、パラメーターと状態を同時推定している点が異なります。