裁量政策がもたらす時間的整合的な解について 1

(お断り)
以下の内容は矢野がお勉強のために書いています。正しいという保証はまったくありません。ご承知置きください。また、間違いを発見されましたらお知らせください。

(予備知識 その1)
現代のマクロ経済学では経済政策はおおまかに分けてルール型政策と裁量型政策の2種類があると考えられている。ルール型政策は政府・中央銀行等が「○○な場合には××とします」とルールを事前に宣言し、その通りに政策を実行する方式、裁量型政策とは政府・中央銀行が時と場合に応じて最適だと判断する政策をルールなどの制限なく実行する方式である。

(予備知識 その2)
現代のマクロ経済学では「時間非整合の問題」というものがあると考えられており、一般に言って「時間非整合」は避けることが望ましいと考えられている。時間非整合とは「政府が最初に約束した政策と違った政策を後に実行すること」である。

(議論 その1)
たとえば、大雨が発生したら水害が起こってしまうような低地があったとして、行政は「ここは水害の危険がありますから誰も住んではいけない。住む人がいても保護しない」と警告していた場合を考える。政府の事前の警告が十分に信認されれば誰もそこには住まないと考えられる。

問題は「いや、政府はそんなことを言っているけど、実際に住んじゃえば堤防を作るなどして守ってくれるに違いない」と思う人がいる場合で、その場合はそこに住む人が出るかもしれない。その時の政府の対応には二つの道があって、一つ目は「事前に住む人がいても保護しない」と警告したのだから何もしない、二つ目は「そうは言っても住む人がいる以上は保護せざるを得ない」と何か対策を講じる。一つ目の道をルール型政策といい、二つ目の道を裁量型政策という。

ここで重要なポイントは「政府がルール型政策を堅持すると信認されたら低地には誰も住まないだろう」と考えられる(みんな洪水で死にたくないから)が、「政府が裁量的政策を取ると見なされたらそこに住む人が現れる」と考えられる(どうせ政府が保護してくれるから)という点である(後者の場合、時間非整合の問題が発生する)。

つまり政府の「住む人がいても保護しない」という最初の警告をそのまま堅持するには「ルール型政策でなければならない(裁量型政策を取ってはならない)」ということになる。

(補足)ここまでの考察だと「時間非整合の問題を避けるにはルール型政策でなければならない」ように見えるかもしれないが、実際には「裁量型政策でも時間非整合を避ける(裁量政策がもたらす時間的整合的な解)」方法がある。次回はその方法のひとつであるインフレターゲッティングについて述べる。