リフレ政策の予感(ただし米国で)

[お断り]当blogに書いてある内容はすべて矢野個人の意見であり、矢野が所属するいかなる組織とも関係ありません。
日本ではリフレ政策(インフレーションターゲット制を採用して、GDPデフレーターで年率約2%から3%程度のマイルドなインフレを実現しようという政策)というのはまったく理解者がいないというのが現状なのですが、アメリカ合衆国では日本より先にリフレ政策が採用される可能性が出てきたようです。

Mankiw先生は「(米国で)デフレの危機が迫っている」と警告したうえで以下のように書いています。

I think it is time for the Fed to consider in earnest taking up some form of inflation targeting. (Or, better yet, price level targeting.)
「私はFRBがインフレーションターゲティング(もしくはより良いのは物価水準ターゲティング)を何らかの形で採用することを真剣に検討すべき時期に来ていると思う」(矢野訳)
Greg Mankiw's Blog, "Deflation Alert"

Rogoff先生はさらに過激で「6%程度のインフレを起こせ」と主張しています。

It is time for the world's major central banks to acknowledge that a sudden burst of moderate inflation would be extremely helpful in unwinding today's epic debt morass.
「今は、世界の主要中央銀行が、適度なインフレの発生は現在の負債に関する大問題の中で、大いに助けとなってくれるだろう事を認める時だ。」(id:okemosさん訳)
Kenneth Rogoff, "Embracing inflation"
ケネス・ロゴフ:インフレを受け入れよう - P.E.S. (okemosさんによる全訳)

Rogoff先生はこんな風にも書いています。

幸運な事に、インフレを生み出すのは精密科学の問題ではない。中央銀行が行わなければならない事は、政府の負債を購入する為にお金を刷りつづけることだ。その主な問題は、インフレが、5−6%ではなく、20%や30%のように高くなり過ぎてしまうかもしれない事だ。じっさい、この高くなりすぎてしまうかもしれないという恐れが日本銀行を10年もの間、麻痺させてしまっていた。しかし、この問題は、簡単に対処できる。優れたコミュニケーション手段があれば、インフレ期待は抑えることができる。インフレは必要とあればすぐに抑える事ができるのだ。(id:okemosさん訳)

まったくRogoff先生のおっしゃる通りだと思います(ただし、矢野はインフレ率は2〜3%でいいと思っている点が異なります*1)。日本においてこのような内容が知られていないのは大変に残念なことだと思います。

そのためにわれわれ日本人は多くのものを失ってしましました。失われたものは永遠に返ってこないでしょう。そして、今の若者たちが、何の罪もないにもかかわらず、その負債を背負って非常につらい思いをすることになるのでしょう。

Mankiw先生やRogoff先生が提唱している内容を日本でも検討すべき時期に来ていると思います。

若者たちの、そしてこれから生まれてくる子供たちの将来の負担を減らすために、今後ともぜひとも多くの方とDSGEに基づいた議論をさせていただきたいと思っています。

[お礼] id:okemosさん、いつも素晴らしい翻訳をありがとうございます。

*1:ただし、短期的にはもう少し高いインフレ率でもいいのかもしれませんが、その点については理論的に検討が必要ではないかと思います。