(矢野は他人の書いた本について感想や書評を書くことはほとんどありません。気の利いたことを書けないからです。今回は少し例外的に感想を書いてみることにします[今回も気の利いた話はまったくありませんが]。)
純粋に面白かったです。
正直に言ってバーナンキ先生のことはほとんど知りません。知っていることと言えば、ヒゲ親父だってことと、Gertlerと1989年に論文を書いたことくらいで、その論文もあまり熱心には読んだことがないのが実情だったりします。後は、ケチャップ・・・
この本はバーナンキをネタにしつつ「田中秀臣、日本の金融政策を斬る」という内容なのですが、田中さんが以前から提唱しておられる「プラクティカルマクロ経済学(ド・マクロ)」と「動学マクロ理論(ミクロ的基礎つきマクロ経済学)」がほどよくミックスされていると思います。
矢野個人は動学マクロ理論の方が原理的には優れていると思いますが、まだまだ発展するべき余地があるとも感じています。現時点ではプラクティカルマクロと動学マクロがほど良くミックスされた状態は実際の経済を考える際には現実的な解だろうと思います。
「バーナンキ先生のことをまったく知らないのに、よく言うよ」と自分でも思いますが、バーナンキ先生の頭の中も田中さんの本のように二つがほどよくミックスされた状態なのではないかと思います。
矢野の知る範囲ではすぐれた実践者はしばしば経験的な知識と理論的知識を適切に組み合わて使っているようです*1。
一つ苦言があるとしたら、「文献リストを本の最後につけてくださいよ〜」です。多分、時間がなかったんだと思いますけど。