(日銀WP)物価・賃金フィリップス曲線の推計

価格粘着性と賃金粘着性を考慮に入れたNew Keynesian動学マクロモデルから導出される物価・賃金Phillips曲線を日本データを使って推定した論文です。Erceg et alの論文の実証ですね。

New Keynesian Phillips曲線に実質均衡賃金からの乖離率が加わって少し複雑になっていますが、基本的な感じはあまり変わりません(近年、大流行のNew Keynesianモデルは労働市場では賃金の変化は柔軟であると仮定しているが、Ercegらのモデルは賃金粘着性を導入している点が違う)。

現在のインフレ率に対して過去のインフレ率が大きな影響力を持つという結果はFuherなんかが従来から主張していることを日本データで裏付けています。それと重要だと思うのはやっぱり将来に対するインフレ期待も現在のインフレ率決定に影響を及ぼすという結果だと思います。この結果を素直に読むなら、「日本においてもインフレターゲットはデフレ脱却に有効だ」という風になる気もしますが・・・

論文で議論になりそうなのは均衡産出量も均衡実質賃金も隠れた変数なので、その推定が妥当であるかどうかという点かなと思います。
http://www.boj.or.jp/ronbun/05/wp05j08_f.htm

(補足)政策決定会合が量的緩和残高目標の下限割れ容認をしないことを願っています。