視点争点:アベノミクスで実質賃金は緩く上昇(参考文献紹介)

本日発売の「週刊エコノミスト」の連載「視点争点」に矢野の記事「アベノミクスで実質賃金は緩く上昇」(文字数に制限があり、このタイトルになりました)が掲載されています。紙数の関係上、参考文献を載せられなかったので、このエントリーで補足します。

ケインズが「雇用・利子および貨幣の一般理論」で「実質賃金は景気に反循環的半循環的である」と述べたがの1936年。それに対する実証的批判はダンロップとターシスによってそれぞれ1938年、1939年に行われました。当時ダンロップは24歳で、アメリカからケインズの所に留学中。その後、89歳まで生きたダンロップは1998年にJournal of Economic Perspectivesにこの論争(実質賃金は反循環的半循環的か順循環的か)についてサーベイ論文(というか回顧論文?)を書いています。
http://pubs.aeaweb.org/doi/pdfplus/10.1257/jep.12.2.223

日本で実質賃金が順循環的か反循環的半循環的かについては以下の実証が有名です。有賀他(1992)
http://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list2/r22/r_22_130_161.pdf

矢野の今回の記事で1997年以降のデータに限ってグラフを作ったのは以下の研究に基づきます。
黒田祥子・山本勲、(2006)、『デフレ下の賃金変動―名目賃金の下方硬直性と金融政策』、東京大学出版会 

全般的な議論としては以下の教科書の第5章(特に第6節)にまとまっています。
ローマー(2010)、『上級マクロ経済学[第3版]』(日本評論社、堀雅博・岩成博夫・南條隆訳)