モンテカルロフィルター(粒子フィルター)入門の決定版:Bayesian Signal Processing

(2014年7月27日追記)日本統計学和文誌に「粒子フィルタの基礎と応用」という記事を掲載いただくことになりました。「動学的確率的一般均衡モデル&ベイズ・マクロ計量経済学」のページに草稿版をアップロードしています。ご笑覧ください。(追記ここまで)

[少しずつ普及を始めるモンテカルロフィルター(粒子フィルター)]
最近、「モンテカルロフィルター(粒子フィルター)を勉強したい」という方が少しずつ増えてきています。

最近までは「モンテカルロフィルター(粒子フィルター)って何それ?」と言われることの方がずっと多かったので、それを専門に分野に選んでもう7年近くなる矢野にはうれしいことです。

この分野は日本人統計学者によって発案・開拓されたという経緯もあり、日本が世界の最先端を走っている数少ない分野の一つです。多くの日本人研究者がそのことを知らず、せっかくのアルゴリズムが海外で先に大いに使われることに矢野は時々歯がゆい思いをすることが少なくありません。

[この分野の基本書]
ただし、この分野を勉強したいという方のために適切な教科書が少ないというのも少なからぬ現状でした。この分野の基本書としてはSequential Monte Carlo in Practiceがあるのですが、これは完全に当時(2001年)の最先端の研究を集めた論文集で、教科書としては使いにくく、Beyond the Kalman filterMonte Carlo Strategies in Scientific Computingは完全に上級者向けの解説書なので、初心者にはちょっと勧めにくいというのが現状でした。

[Bayesian Signal Processing]
最近、出版されたBayesian Signal Processing: Classical, Modern and Particle Filtering Methodsベイズ推定の基礎から、モンテカルロ法、カルマンフィルター、モンテカルロフィルター(粒子フィルター)へと自然な流れで理解できるように構成されており、この分野を始めて学ぶ人に優しい教科書になっています。特に第8章に「時変パラメータ推定」(←矢野がいつも使っている手法)が取り上げられいて、非常に素晴らしいです。

正直に言って、少し高価な本なので、手放しでお勧めするという訳にはなかなかいかないのですが、この分野を真剣に勉強してみたいという方には十分にその価値のある本だと思います。

[過去の関連エントリー]
モンテカルロ粒子フィルター〜さよならカルマンフィルター〜(関連論文へのリンクあり)
http://d.hatena.ne.jp/koiti_yano/20061127/p2
モンテカルロフィルター(粒子フィルター)のソースコード・入門書
http://d.hatena.ne.jp/koiti_yano/20081115/p2

[補足]
矢野自身が書いたもので大変にお恥ずかしいのですが、以下の論文は「モンテカルロフィルター(粒子フィルター)」の入門書の代わりにも使えるようにアルゴリズムの導出を比較的直感的な方法で書いてあります(元々は矢野の博士論文の草稿[の一部]を日本語に訳したもの)。「Bayesian Signal Processingをいきなり読むのは敷居が高い」と思われる方はここから始めてみてはいかがでしょうか?
矢野浩一・佐藤整尚、(2007)、「初期分布探索付き自己組織化状態空間モデルによる金融時系列解析の最前線:t分布付き確率的ボラティリティ変動モデルへの応用」、FSAリサーチレビュー(2006年度版)
http://www.fsa.go.jp/frtc/nenpou/2006a/05.pdf