ミシュキン「インフレターゲットのススメ」

Hicksianさんのエントリー経由*1

[追記]hicksianさんが後半を訳してくれました。皆様ぜひそちらもご覧ください*2

[金融危機]インタゲのすすめ+α
http://d.hatena.ne.jp/Hicksian/20090525#p1

今年1月にフレデリック・ミシュキン教授がFinancial Timesに書いた記事"In praise of an explicit number for inflation"の抄訳をしたことをすっかり忘れていました。

フレデリック・ミシュキンといえばコロンビアビジネススクールの教授であり、アメリ中央銀行FRBの理事を勤めたこともある人物で、金融政策について理論と実務両面から精通した金融論の世界的な大家です。

抄訳をしたのはかかなり前の話なのですが、何かのご参考までどうぞ。

フレデリック・ミシュキン「インフレターゲットのススメ」

世界の多くの中央銀行が、数値を明示したインフレの目標値を設定している。一般にはインフレターゲットと呼ばれている。アメリカのFRBは現時点では採用していないが、採用の可能性については議論している。現在のように、経済が真っ逆さまに落ちている(the economy in freefall)状態で、インフレターゲット採用に向けて動くのは間違っているのだろうか?現在のように金融危機や経済の停滞に我々が苦しんでいるときにインフレを安定化させるという公約をより強化することは正しいことだろうか?

私の答えは完全に"YES"だ。数値を明示したインフレ目標を採用するのは、今まさにアメリカ経済が回復をするのに必要なことなのだ。

特定の数値をインフレ目標に定めるという透明で信頼のおける公約を行うという点に関してよく論じられる利点、企業が長期のインフレ期待をしっかり持つことができるようになるという点だ。その結果として安定した低インフレという目的に貢献することができる。数値を明示したインフレ目標を採用するというやり方は多くの国でインフレ率が高くなりすぎるのを防いできた。しかし、インフレターゲットはインフレ率が低くなりすぎるのを防ぐのにも役立つという点はあまり認識されてこなかった。この緊急時においてはその利点は多いに価値がある。

(中略)
第一に今ではインフレ率が負になる可能性が高まっている:つまりデフレだ。大恐慌と日本の「失われた十年」の経験から、デフレが大きな問題を引き起こすことが分かっている。
(以下略)
[(矢野注)この後、記事ではインフレターゲットを設定することのメリットと「インフレターゲットを採用すると景気に対する配慮が難しくなるのではないか」というお決まりの疑問に対して、それが単純な誤解にすぎないことを解説しています。]
[原典] In praise of an explicit number for inflation
http://www.ft.com/cms/s/0/9fafc180-e013-11dd-9ee9-000077b07658.html

*1:このエントリーの題名も元ネタはHicksianさん

*2:hicksianさん、ありがとうございます。