MCMC法とその確率的ボラティリティ変動モデルへの応用

さて、今までも何回か当blogでは書いてきたことなのですが、矢野の専門はモンテカルロフィルター(=粒子フィルター=逐次モンテカルロ法)です。これは非ガウス非線形・非定常状態空間モデルの状態推定とパラメーター推定を行える非常に有用性の高いアルゴリズムなのですが、比較的新しいアルゴリズム(開発されてからまだ10年ほどしか経っていない)こともあり、あまり他の研究者にも知られていないのが現状です*1

え?「お前の専門なんぞ聞いてねーよ」ですかそうですか_| ̄|○

・・・さて、ボヤキはともかくとして、世間の多くの研究者が非ガウス分布の関係する統計学的な推定を行う際に使うアルゴリズムとしてマルコフ連鎖モンテカルロ法(Markov Chain Monte Carlo Method, 以下MCMC)があります。

近年、MCMCは非ガウス性が重要となるファイナンスの実証分析においてよく用いられる手法となっています。例えば日次の株価収益率の分布はガウス分布正規分布)よりも裾野の長い、いわゆるファットテール性を持つことが多くの実証分析から知られています。

このようなファットテール性のある日次の株価収益率などの金融時系列解析のために良く用いられる数理モデルの一つが確率的ボラティリティモデル(stochastic volatility models, 以下SV)です。

近年、このSVをMCMCを用いて推定する手法がファイナンス実証分析の標準的な手法となっているため、矢野も時折、MCMCに関して質問をいただくのですが、正直に言って専門外なので返答に困ることがよくあります。

ちょうどタイミングよく3月にこの分野の大家である二人の先生がMCMCとSVモデルのサーベイを書かれていました。

大森・渡部、(2007)、MCMC法とその確率的ボラティリティ変動モデルへの応用
http://www.e.u-tokyo.ac.jp/cirje/research/dp/2007/2007cj173.pdf

いずれは矢野もこんなサーベイが書けるようになりたいなぁ。え?永遠に無理ですかそうですか。

*1:他にも適用範囲が状態空間モデルに限られるという点などもあまりメジャーでない理由の一つかもしれません。