魔法のナンバー1600

メリークリスマス!(←やけになっているのでここはスルーするように)。クリスマスイブにふさわしく「魔法」の話でもしましょう(←無理矢理)。

銀河ヒッチハイク・ガイド」というドタバタSFがあって、その中に「宇宙人が『生命と宇宙と万物に関する究極の答え』を計算する為にスーパーコンピューターを作る。750万年かかって導き出した答えは『42』」だった、という話が出てきます(ここまでja.wikipediaから)。

問題は「なぜ答えが42なのか?」が分からないのです。そこでその宇宙人はさらに大きなスーパーコンピューターを作って「なぜ答えが42なのか?」の計算を始めるのですが・・・(オチがどうなったかは「銀河ヒッチハイク・ガイドASIN:4309462553い)

ここで現れる「42」のように訳の分からない数字のことを時々、魔法の数字(マジックナンバー)と呼ぶことがあります*1

さて、マクロ経済学でよく使われるdetrend手法の一つにHodrick-Prescottフィルターというアルゴリズムがあります。Hodrick-Prescottフィルターには \lambda=1600というマジックナンバーがあって、それが「なぜ1600なのか?」について誰も質問に答えてはくれません。

以前、矢野がdetrendした時に「Hodrick-Prescottフィルターじゃなきゃダメだ」とアドバイスしてくださった方がおられ「 \lambdaはどうしましょうか?」と聞いたところ「もちろん1600だ」と言われました。

心の中で「そこは本当は42じゃないでしょうか?」とつぶやいたのは言うまでもありません(なにしろ「42」は「生命と宇宙と万物に関する究極の答え」なんだから、Hodrick-Prescottフィルターでも有効に違いない!)。

それ以降、矢野はdetrendをする時にはマクロ経済学者と話をするためだけにHodrick-Prescottフィルターを使うのですが、その度に「 \lambda=42」として計算してみたい誘惑に駆られます。ただし、いつも「 \lambda=42で計算すると地球が破壊されてしまうかもしれない」という恐怖で思いとどまるのですが(詳しくは「銀河ヒッチハイク・ガイド」をお読みください*2)。

クリスマスイブだから特別に当blogの読者の皆さんにだけ告白するのですが、だからいつも「地球が破壊される危機から、皆さんを救っている名もなきヒーロー」は仮面ライダーでも、プリキュアでもなくて、僕なんですよ(他の人には内緒ですよ!)。

あ、ところで、そこの君、新しいスーパーコンピューターを開発して「なぜ1600なのか?」について計算してくれないか!?

[参考文献]
Hodrick-Prescott filter
http://en.wikipedia.org/wiki/Hodrick-Prescott_filter

[補足]
元論文であるHodrick and Prescott (1997)を読むと、1950年第1四半期から1979年第2四半期までのアメリカのGNPを使っています。で、元論文には1600の理由がちゃんと書いてあって、自己相関や単位根検定もしてあるのですが、問題はそれが一人歩きして、「どんな時でも(無批判に)1600」な点が問題なのではないかというのが今回言いたかったことなのでした。Hodrick and Prescott (1997)がやったように毎回 \lambdaの妥当性を統計学的に検証して使うならば問題は少ないのではないかと思います。

*1:ちなみにプロ野球でも「マジックナンバー」という言葉を使いますね。ちょっと意味が違いますが。

*2:銀河ヒッチハイク・ガイド」では話の冒頭でいきなり地球が破壊される。その理由は後のエピソードで明かされるが、実は「生命と宇宙と万物に関する究極の答えは42」という話と関係がある。