ハリ・セルダンになりたくて 第1部 (4)

12月30日からの続き

我々は残像を見ている

僕は「日本銀行印刷機で刷るお札の量が少なすぎる」、そして、「お札の量が少なすぎると景気が悪くなる」と述べた。

しかし、景気や株価の動向に詳しい人ならば、僕の意見が矛盾していることに気がつくだろう。というのは、2005年の景気は非常に良いからだ。さらに株価も好調である。株式市場の値動きを示す日経平均は2005年の間に40%も上昇した。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20051230AT2D3001530122005.html

さて、今、何が起こっているのかを説明する前に、名目GDPのことを説明しよう。とても重要なことだからだ。名目GDPとは国内で生産したものをその値段で合計したもののことだ。そして、名目GDPは国内の総所得にほぼ等しい。さらに国内総所得は皆さんのお給料の総額と深い関係がある。

国内総所得が上がれば、皆さんの給料は上がり、国内総所得が下がれば、皆さんの給料は下がる。基本的には。

僕の推計では日銀が刷るお札の量と名目GDPは正の関係にある。つまり、お札をする量が増えれば、名目GDPが上がり、お札を刷る量が減れば名目GDPが下がる。

ただし、一つ重要な点がある。その関係には時期にズレがあるということだ。約5四半期(約1年3ヶ月)のズレが。
つまり、お札を刷る量が増えるた後、名目GDPが上昇するのは1年3ヶ月から1年半後だということだ。減った場合に下降を始めるのはやはり同じように1年3ヶ月から1年半後になる。

ここで一つのグラフを見て欲しい。去年の12月半ばに僕が作ったグラフだ。
http://f.hatena.ne.jp/koiti_yano/20051231160329

黒い実線が日銀が刷ったお札の増加量、三本の点線が僕が計算した最適なお札の増加量だ。グラフを見れば分かるが、2003年から2004年前半までは日銀がかなり大量のお札を刷ったことが分かる。そして、その恩恵が1年3ヶ月から1年半後に現れる。つまり、2005年だ。

問題はその後だ。2004年第3四半期から日銀はお札をする量を大幅に減らした。このグラフでは2004年第3四半期までしかないが、それ以降の状況はもっと悲惨で、2%程度を低迷している。
http://rank.nikkei.co.jp/keiki/kinyu.cfm (「マネタリーベース前年比」の項目を参照)

このグラフが始めてできたときに僕は思った。「悪影響が出てくる時期はいつだろうか?」考えるまでもなかった。2006年だ。お札をする量が減れば名目GDPが減り、名目GDPが減れば総所得が減り、総所得が減れば皆さんのお給料が減る・・・そして起こることは昨日、「経済を子守する。」で学んだとおり

このグラフを始めて完成した時、僕は思わずつぶやいた。
「腐ってやがる。早すぎたんだ」*1

*1:アニメ「風の谷のナウシカ」の登場人物クロトワの台詞