ハリ・セルダンになりたくて 第1部 (3)

経済を子守する

アメリカの経済学者Paul Krugmanが書いた「経済を子守りしてみると。」という面白い文章がある。幸いにも山形浩生さんのお陰で日本語訳で読むことができる。
http://cruel.org/krugman/babysitj.html

クルーグマンの「経済を子守りしてみると。」を要約するとこうだ。「働く人たちがお互いに子守をしあう組合を作る。子守を他の人にお願いするためには子守券を渡さないといけないが、人々が『この子守券は将来使おう』と思って溜め込んでしまうと、子守券が貴重になってしまって、『お互いに子守をして助け合う』という当初の目的が達成できなくなってしまう」。

この話を経済に置き換えると「子守券=お金(日本なら円)」、「子守で助け合うという目的が達成できなくなる=不況」になる。

そして、その困った状況は子守券をいつもより少し多めに発行する、つまり経済が不況ならばお札(日本なら円)を多めに刷れば脱出できる。ここが重要な点だ。

ただし、ここには重要な話が抜けている。クルーグマンははっきりとは書いていないけれど、実は子守券を発行する人が、子守券を減らしてしまうと「不況」がはじまる。というのは子守券が減ってしまうと子守券が貴重になり、みんな外出を控えて子守を頼まなくなるので、不況になるわけだ。そして、それは日本におけるお札(1万円札だとか5000円札だとか)に関しても同じだ。

日本銀行印刷機で刷るお札の量が不足すれば、不況がやって来る。

僕の研究は「日本銀行印刷機で刷るお札の量が少なすぎる」と教えていた。

だから、僕は2004年12月の深夜、道端に座り込んで星の見えない夜空を見上げていた。

(2005年12月31日に続きます)