Hodrick-Prescottフィルターをかける前の変数変換

なぜか「日本の実質GDP(季節調整済み)にHodrick-Prescottフィルターをかけて潜在GDPGDPギャップを出したいのだが、そのままの値にかけるのか、対数変換した値にかけるのか、成長率にかけるのか」と聞かれました。

矢野「えーっとそもそも矢野はその方法には非常に批判的なんですが・・・」
質問者「矢野さんの意見は聞いてないから」
矢野「ですよね〜」

・・・三流時系列屋ですみません_| ̄|○・・・

・・・・・・・・・・・で、気を取り直して・・・・・世間一般ではどうなのか分かりませんが、少なくともPrescott先生ご本人は対数変換したGDPにH-Pフィルターをかけているようです。というのはKydland and Prescott (1990)に以下のように書いてあるからです。

(H-Pフィルターについて説明した後に)
"We found that if the time series are quarterly, a value of  \lambda = 1600 is reasonable. With this value, the implied trend path for the logarithm of real GNP is close to the one that students of business cycles and growth would draw through a plot of the series (以下略)"(Kydland and Prescott (1990)のpp. 7、第2パラグラフ)。1990年の論文なので、GDPじゃなくてGNPになってますが・・・

それとwikipedia (英語版)にも"logarithms of a time series variable"と書いてあるので、対数変換した値にH-Pフィルターをかけるのがよくあるやり方なのではないかと思います。

対数変換した日本の季節調整済み実質GDPにHodrick-Prescottフィルターをかけて算出した「トレンドとGDPギャップ」(と呼ばれている何か)を見て、「日本の潜在GDPGDPギャップがうまく推定されているなぁ」と感じるかどうかは人それぞれですが・・・*1

[参考文献]
Finn E. Kydland & Edward C. Prescott, 1990. "Business cycles: real facts and a monetary myth," Quarterly Review, Federal Reserve Bank of Minneapolis, issue Spr, pages 3-18.

Hodrick-Prescott filter - Wikipedia, the free encyclopedia

[補足](7月19日追記)
そのままの値にH-Pフィルターをかけた結果と対数変換した値にH-Pフィルターをかけた結果は基本な形状は変わらないはずですが、スケールが変わってしまうので注意が必要ではないかと思います。

*1:矢野はそう感じたことはないです。アメリカでうまくいく[と主張されている]からといって、日本でもうまく行くとは限らない訳でして・・・うまく行っているのかもしれませんが・・・